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「リル」
『おお、主殿。 どうかされましたか? わたくしめに何かご用命でも?』
「今どこに居る?」
『今は屋敷の周辺の見回りをしている最中ですが』
それは好都合。
「急で悪いんだけど、今すぐ山の様子を見に行ってくれないか? 強力な魔物の反応を探知した」
『承知しました』
リルが返事をした直後、屋敷の方から凄まじい速度で山の方へと駆けていく獣が目に入った。
流石は元魔王の部下。
仕事が早い。
「どうだ、リル。 山には着いた?」
『今しがた』
「じゃあ次は魔物の居場所を特定してくれ。 奥の山のてっぺん辺りに居ると思う」
『承知。 して、見つけた場合はわたくしめが処理して構いませぬかな』
魔力量からして明らかにリルより格下だ。
任せて問題ないだろう。
「ああ、頼む」
『はっ』
それから報告が上がったのは、調査を頼んでからおよそ三分後の事だった。
『主殿、申し訳ございません』
「どうした?」
『倒し損ねました』
リルがそう言った次の瞬間。
山の方から鷲のような声が響き、それとほぼ同時に大量の鳥が山から飛び立った。
その烏合の中に、一際大きな影が浮かび上がっている。
大鷲の魔物、グリフォンだ。
「わかった、なら仕方ない。 俺が殺るよ」
『お役に立てず申し訳ない。 どうにもわたくしめは飛行型の魔物と相性が悪く……』
「分かってるから気にしないで良い。 後は任せておいてくれ」
『御意』
部下の尻拭いは上司の役目。
ちゃちゃっと終わらせますか。
じゃないと……。
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