208人が本棚に入れています
本棚に追加
「まっ、待て待て待て! ちょっと待て! なんでそんな話になってるんだよ! 俺はただ……!」
「リュートが言ったんじゃないですか! 親密になりたいとか、わたしじゃなきゃダメだとか! それってもう告白……うぅー!」
「……あ」
あああああー!
言われてみたら確かに告白に聞こえるフレーズじゃねえか!
てことはだ。
フィオがこんな状態になっているのは、間違いなく……!
「で、でも難しいと言っても決してダメと言う訳でも無くてですね!? むしろわたしとしては、やぶさかでは無いと言いますか……こんな正直に想いをぶつけられては、女として悪い気はしないと言いますか……! なのでリュートさえ本気ならわたしは……!」
「進むな、進むな! 戻ってこい! 一旦こっちに戻ってこい! どこに向かって突き進んでるんだ、お前は! そっちには何もないぞ! だから戻ってくるんだ、フィオ! 俺を置いていかないでくれ!」
と、最早収拾が着かなくなってきた頃。
ゴーン、ゴーン。
門の先から突然荘厳な鐘の音が鳴り響いた。
「綺麗な音……」
「だな」
幾度となく繰り返される重厚な鐘の音。
その響きに心を奪われていたら、こちらに気付いたいかにも規律に厳しそうなインテリ眼鏡男子が、鋭い目付きで睨み付けてきて……。
「おい貴様ら、何をそんな所でモタモタしている! さっさと講道館へ向かえ! 入学早々、減点されたいのか!」
「やべっ」
もうそんな時間だったのか。
こうしちゃいられない。
さっさと向かわねば。
「すいまっせん! 今すぐ向かいまーす!」
「ご迷惑おかけしました!」
一言謝りながら急いで校門を通ると、インテリ眼鏡は何故か俺を視界の中心に捉え、「ふんっ」と鼻を鳴らしてきた。
そこまで遅刻が気にくわないのか、それとも俺個人が嫌いなのかわからないが、どちらにせよ嫌なやつだ。
絶対に関わらないようにしよう。
……ところで、講道館ってどこ?
「な……なんとか間に合った……」
まさか講道館の場所と自分の席の番号が入学許可証に記載されていたとは……フィオが居なかったら、確実に遅刻していたに違いない。
フィオ様々だ。
お礼に今度飯でも奢ってやろう。
最初のコメントを投稿しよう!