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「お前、度胸あんなぁ。 間に合ったから良かったけどよ、もし遅刻してたらあの規則の鬼が黙ってないぜ?」
「規則の鬼? なんだそれ?」
話しかけてきた隣に座る陽キャにおうむ返しの如く尋ねると、陽キャは教師陣の席が並ぶ講道館の脇を指差し、こう言ってきた。
「知らねえの、お前? ほら、あそこの隅で目を光らせてやがるすかした眼鏡野郎が居るだろ。 あいつが規則の鬼と恐れられている生徒会副会長、シグナス=フェイオンだ。 目をつけられたら最後、我が校に相応しくないとかなんとか主張を押し通して、退学に追い込むらしいぞ」
「あいつが? あの眼鏡先輩が……? マジかよ……」
さっき俺を妙に睨んできた眼鏡くんが、この学園の生徒会副会長?
詰んだ……。
平穏に過ごす筈だった俺の学園生活は、入学と同時に詰んでしまった……。
「その反応、もしかして……」
死んだように頷くと、陽キャは憐れみの視線を向けながら俺の肩に優しく手を置いて。
「まあ、そう気落ちすんなよ。 学園だけが人生じゃねえんだ。 退学になったってなんとかなるって、きっと」
「退学になる前提で話進めるのやめてくんない?」
「……ぶっ! ははははっ、確かにな! まだどうなるか分かんねえのに決めつけはよくないわな! わりいわりい!」
こいつ、もしかして良い奴なのでは?
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