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「炎よ、焼き尽くせ! ファイアーボール!」
火の粉かな。
「おし、当たった!」
しょぼ……ゴーレムの表面を煤けさせただけで終わってしまった。
「はい。 では次の方、前へ」
「よろしくお願いします! 風の刃よ、切り裂け! ブルームカッター!」
そよ風かな。
一応は当たったが、切り傷一つ付いていない。
まさかとは思うが、こいつら……。
「行きます! 水よ、射ち貫け! アクアショット!」
やっぱりそうだ。
こいつら全員、魔法の質が低すぎる!
嘘だろ、なんだこの低レベルの魔法の数々は。
お遊戯会じゃないんだぞ。
もっとこう、あるだろ!
強烈な一撃を放てる魔法が!
しかしその後の生徒もみな同じレベルばかりで、見るに堪えないものばかりだった。
それでも試験はつつがなく進み、遂に終盤に差し掛かる。
「次! マーク=オルガ!」
「頑張ってください、マーク様!」
「応援してます!」
「ああ」
なんだ……?
いかにもお坊ちゃまって感じのオールバックの男が出てきたら、ザワザワし始めたぞ。
有名な奴なのか?
「ダスティ、あいつは?」
「なんだよ、知らねえのか? リュートって結構世間知らずなんだな」
ほっとけ。
「あいつはマーク。 生まれも育ちも王都出身の、上流貴族のお坊ちゃんだ。 かなりデカイ家柄らしくてよ、ああやって取り巻きを連れ歩いてるんだが、素行が悪いもんで周囲からは怖がられてんだ」
「へぇ……」
こりゃまためんどくさそうな奴が……。
「……大地よ、穿て! アースグレイブ!」
ほう、地面から土の槍を突き刺す魔法か。
なかなかどうして悪くない。
俺の砂鉄を固めた鉄の槍に比べたらだいぶ見劣りはするが、今までの奴らに比べたら雲泥の差だろう。
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