最小限の魔力、最低限の魔法

2/6
前へ
/381ページ
次へ
「炎よ、焼き尽くせ! ファイアーボール!」  火の粉かな。 「おし、当たった!」  しょぼ……ゴーレムの表面を煤けさせただけで終わってしまった。 「はい。 では次の方、前へ」 「よろしくお願いします! 風の刃よ、切り裂け! ブルームカッター!」  そよ風かな。  一応は当たったが、切り傷一つ付いていない。    まさかとは思うが、こいつら……。 「行きます! 水よ、射ち貫け! アクアショット!」  やっぱりそうだ。  こいつら全員、魔法の質が低すぎる!  嘘だろ、なんだこの低レベルの魔法の数々は。  お遊戯会じゃないんだぞ。  もっとこう、あるだろ!  強烈な一撃を放てる魔法が!  しかしその後の生徒もみな同じレベルばかりで、見るに堪えないものばかりだった。  それでも試験はつつがなく進み、遂に終盤に差し掛かる。   「次! マーク=オルガ!」 「頑張ってください、マーク様!」 「応援してます!」 「ああ」  なんだ……?  いかにもお坊ちゃまって感じのオールバックの男が出てきたら、ザワザワし始めたぞ。  有名な奴なのか? 「ダスティ、あいつは?」 「なんだよ、知らねえのか? リュートって結構世間知らずなんだな」  ほっとけ。 「あいつはマーク。 生まれも育ちも王都出身の、上流貴族のお坊ちゃんだ。 かなりデカイ家柄らしくてよ、ああやって取り巻きを連れ歩いてるんだが、素行が悪いもんで周囲からは怖がられてんだ」 「へぇ……」  こりゃまためんどくさそうな奴が……。 「……大地よ、穿て! アースグレイブ!」  ほう、地面から土の槍を突き刺す魔法か。  なかなかどうして悪くない。  俺の砂鉄を固めた鉄の槍(グレイプニール)に比べたらだいぶ見劣りはするが、今までの奴らに比べたら雲泥の差だろう。  
/381ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加