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「クエエエエッ!」
「ひっ! な、なに今の鳴き声! まさか魔物!?」
「あ……あれを見ろ! グリフォンだ! グリフォンが来たぞ!」
「うわああああ! 皆、逃げろおおお!」
「きゃああああ!」
あーあ、言わんこっちゃない。
無駄に騒ぐせいで、グリフォンの狙いが俺から村人へと移ってしまった。
このままじゃ村の人達が食い物にされかねん。
早々に終わらせるとしよう。
「属性は闇。 構成は空間。 範囲は対象周辺……」
ここから魔法で狙い撃ってもいいんだが、父さんから俺の力は異常だから人目に触れないようにしろと言われてるからな。
勘づかれないよう、発射型ではなくグリフォンの周りに魔法陣を直接展開してっと。
よし、これで母さんが倒したように見せられる筈。
後は、母さんの動きを待って────
「マリア! 民衆は僕が誘導する! 君はグリフォンを引き付けておいてくれ!」
「ええ、なんとかやってみるわ! 光の矛よ、かの者を退ける牙となれ! フォールン……!」
今だ!
「エッジ!」
「アビスゲート」
母さんが放った、光の刃で敵を貫く魔法がグリフォンの胸元を貫ぬいた刹那。
俺はタイミングを合わせて、空間魔法を発動させた。
「ピュイイッ!」
「おお! グリフォンが……!」
「跡形もなく消滅したぞ! マリア様の魔法で!」
「マリア様、すげえ……」
遠目から見たら、さも母さんの魔法がグリフォンを消滅させたように見えただろうが、フォールンエッジにあんな効果はない。
実際にグリフォンを消滅させたのは、俺が放った魔法、アビスゲート。
小型のブラックホールを発生させて、対象のみを吸い込む魔法である。
まあでも魔法をよく知らない村人からしたら、フォールンエッジもアビスゲートも大差無いだろうから、母さんがやったのだと錯覚するんだろうけど。
「マリア、今のは……」
「……ふぅ、まったく…………あの子には敵わないわね、本当に……」
これにてミッションコンプリート。
やれやれ、これだから力がありすぎるってのも楽じゃない。
いつまで隠さないといけないことやら。
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