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「なあ、二人とも。 俺が首席ってどういう事だ? そんな話、初めて聞いたんだけど」
「ん? なんだよリュート、お前まだ成績表見てねえの?」
ああ、そういえばまだ見てないな。
クラス表の隣に張り出されてるんだっけ。
「ほら、あそこの一番上見てください。 リュートの名前が載ってますよ」
「……なっ! ななな……!」
なんじゃこりゃあ!
フィオの指先を追うと、確かに俺の名前などが記されていた。
しかも大々的に。
「予想はしてたけど、やっぱり首席はヴェルエスタで決まりか。 まあそりゃそうだよな、あんな魔法を使えるやつが首席じゃない方がおかしな話だ」
「おい、見ろよ。 実技だけじゃなくて筆記も満点通過らしいぜ、我らが首席様は。 いやー、流石だね。 こんだけ凄いと嫉妬も起きないわ」
そうだよ、それだよ!
むしろなんであんな簡単な筆記試験で、誰も満点取れないんだよ!
義務教育問題レベルだったじゃん!
「て言うかさ、オルガ家のおぼっちゃま、あんだけイキってたのに首席取れなかったどころか四位落ちしてんじゃん。 ウケるんだけど」
「そもそも今年は凄い奴多すぎって話じゃない? ヴェルエスタは勿論だけど、二位のフィオ=ノートも三位のダスティ=ストレングスもかなりヤバかったよね。 この三人には追い付ける気しないわ」
これ見よがしにどや顔をするんじゃない、二人とも。
今それどころじゃないから突っ込まんぞ。
「にしても、オルガの野郎が首席じゃなくて良かったよな」
「それな。 あいつが首席だったらと思うと、身の毛がよだつぜ。 なんせあの野郎は……噂をしたらなんとやらだ」
視線を追って振り返ると、嫌われ者の大貴族の子息、マーク=オルガが子分を引き連れ、肩で風を切って歩いていた。
「道を開けろよ、愚民ども! マーク様のお通りだ!」
「どけどけどけぇっ!」
なんという小物臭。
昭和の漫画にでも出てきそうな、ガキ大将とその子分を思い起こさせる光景である。
だが腐っても大貴族の跡取り。
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