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「どいつもこいつも舐めやがって……だったら見せてやるよ、俺の方が強いって所をな! 死ねえ、リュート=ヴェルエスタ!」
不意打ちとはまた、騎士道精神の騎の字もない……。
同じ貴族として恥ずかしい限りだ。
「ま、待ちなさい! 合図はまだ……!」
「ああ。 構いませんよ、先生。 このくらいじゃあハンデにもなりませんから」
「ぬかせ! うおおおお!」
首筋に向かって振られる剣に、野次馬達が一斉に「あぶない!」だの「避けて!」だの言ってくるが、この程度危なくもなければ避ける必要もない。
指一本で十分だ。
「なっ!」
「「「「…………………は?」」」」
全力で振り下ろされた切れ味鋭い真剣を、人差し指一つで軽々と受け止めた目の前の光景に、野次馬一堂目を点にする。
その光景を横目に、俺は車のオモチャを小突くよう剣を弾き、人差し指をマークに向けながらこう言った。
「一撃だ」
「……?」
「このままじゃ埒があかないからな。 ハンデとして一撃でも俺に入れられたら、お前の勝ちにしてやるよ。 悪くない条件だろ?」
野次馬達が呆然と見守る中、ダスティとフィオが「なに考えてんだ、あいつ。 バカなのか? バカなんだな?」「バカなんでしょう」と呟く。
バカじゃないですー。
まともにやると殺しちゃいかねないから、仕方なく条件出しただけですー。
「どこまで……どこまで俺をおちょくれば気が済むんだ、てめえは! ならその余裕がなくなるくらい追い詰めてやるよ! おらあっ!」
怒り狂ったマークが連続で斬りかかってくるが、どれもポックルの剣捌きには届かない残念な速度。
紙一重で楽々躱せる。
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