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「んじゃな、リュート。 ちゃんと勉強しろよー」
「こっちの台詞なんだが」
「ではわたしもこれで。 リュート、ちゃんと勉強するんですよ。 転げ落ちるのは簡単ですが、這い上がるのは難しいんですから」
「ねえ、なんで二人とも俺にばっかり言うの? ねえ、なんで? ねえ」
あいつら、内心では俺のことバカにしてるな?
よーし、良いだろう。
なら次の試験でも大差で勝ってやろうじゃないか。
そしたらぐうの音も────ガラッ。
「あっ! ヴェルエスタくんだ、おはよう!」
「おはよー!」
「うおっ」
なにごと?
教室に入った途端、30人弱の生徒が一気に押し寄せてきた。
「さっきの決闘ここから見てたよ! 凄かったー!」
「さっすが二組のエースだよな! スカッとしたぜ!」
勝手にエースにしないでほしい。
首席だけでお腹いっぱいです。
「あ、ありがと。 えっと、ところで俺の席は……」
と、話題を逸らそうと自分の席を探していた所で、ここで聞く筈の無い聞き慣れた声が……。
「み……みなさぁん、そろそろ席に着いてくださいねぇ。 ホームルーム始めますからぁ」
「……いっ!?」
な……ななな、なんでシンシアが学園に!?
そんな話聞いてないぞ!
「はーい」
「おまっ、こんな所でなにして……!」
「ヴェルちん、ヴェルちん、なにしてんの? 座らないと先生に起こられちゃうよ?」
皆が席に着く中、シンシアに事の次第を問い詰めようとしていたら、柑橘系の明るい髪色をした快活そうな女の子が話しかけてきた。
このまま問い詰めれば注目を集めてしまう。
ここは一旦引き下がるしかないか。
「あ……ああ、わかった……って、誰がヴェルちんだ!」
「あはは! ほら、早く早く!」
少女は階段を登って三段目の席に俺を座らせると、隣に腰を下ろした。
まさかのお隣さんであった。
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