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「特技、得意魔法は特に無し。 好きな食べ物は肉料理全般。 将来の夢は、領地を発展させること。 以上です」
魔法を創造出来る事が特技っちゃ特技なんだが、流石にそれを公言する訳にはいかないからな。
無難に特に無しとしておけば問題ないだろう。
「何も無いって事は無くね? あんだけすげぇ魔法使っといてさ」
「なんでも出来るから逆に特技になるもんがないんじゃね? 天才肌の奴ってそうらしいぜ」
「ああー、なるほどなぁ」
思わぬ方向に行ってしまった。
「それじゃあ最後に、ルベールくん。 ルベール=ブロッケンくん、自己紹介をお願いします。 ……ルベールくん? あれ、遅刻?」
シンシアの目線を追うと、空席が目についた。
初日から遅刻とは良い度胸だ。
何事も初めが肝心だからな。
足並み揃えないとクラスに馴染めなくなるから、俺なら絶対に遅刻しない。
「ルベールってあれだろ? ダブリって噂の……」
「その話なら俺も聞いたな。 なんでも去年事件起こして、留年したらしいぞ」
「うへぇ、マジかよ」
いわゆる不良ってやつか。
「よく知りもしないくせに……」
通路を挟んで左に座る赤毛の女の子がそう呟いた。
この子の名前は確か……そうだ、カンナ=ブロッケンだったっけ。
ブロッケンなんて珍しい名字がたまたま一緒だとは考えにくい。
悔しそうに唇を噛んでいる所から見て、彼女はルベールの妹とかなのだろうか。
「……なんですの? 貴方もお兄様に何か文句でも?」
こわっ、触らぬ神に祟りなしだな。
この話題には触れないようにしよう。
「いや、なんでもないよ。 ただ、家族の事を悪く言われるのは嫌だよなと思って。 俺も両親の事を悪く言われるのは我慢ならないから、なんとなくわかるよ。 だからあんまり気にするなよ、所詮噂なんだしさ」
「え、ええ……ありがとう、ございます……」
まさか慰められるとは思ってもみなかったのか、カンナは驚きの表情を────
「ナンパ? ねぇ、ナンパしてるの? ねぇねぇ、ナンパ?」
席替えしてぇ……。
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