赤ちゃんでも最強

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「だあ、だぶだぶ。 だぶー」  伝われ、俺の想い! 『……?』  ダメだ、伝わってないっぽい。  万事休す。 『もしや、まだ言葉を…………確かにまだ赤子であらせられるが、同じ年の頃、魔王様は既に魔力通話(テレパシー)で我らとお話になられた。 であれば、あの方と同程度。 いや、あの方以上の魔力を持つ貴方様であれば出来そうなものだが……』  なるほど、だからこいつの言葉が脳内に直接伝わってきてたのか。  物は試しだ、やってみよう。 「あぶぅ……」  属性は無。  構成は伝播。  範囲は対象指定。  多分、これなら……。 『あー、あー。 俺の声聞こえる? 聞こえてたら返事してくれ』 『おお! 聞こえる! 聞こえますぞ、主殿!』 『よかったよかった。 失敗したらどうしようかと……今なんて?』  主とか聞こえたんですけど。  聞き間違いかな。 『主? 主っつった、今?』 『主殿! 主殿! はっはっ』  繰り返さんでよろしい。 『ちょっと待って。 なにその主って。 俺、お前の主になったつもりないんだけど』 『魔物足るもの、強者には従うのみですから! 温情をかけて戴いたのなら尚更! くぅーん』  この弱肉強食論よ。  まあでも分からないでもない。  自然界ってそういうもんだし。 『ふむ……わかった。 ならお前はこれから俺のペットな。 もう俺の指示無しに人を襲うなよ』 「わおーん!」 「ひっ!」  喜びを表現してるのか知らんが、吠えるんじゃない。  母さんが怯えてるじゃないか。 『ではこれよりよろしくお願い致します、主殿!』 『うん。 よろしく、リル』 「……! ウオオオオン!」    いちいち吠えんと気が済まんのか、こいつは。 『今度はなんだ! 何度も吠えるんじゃねえ! ビックリするだろうが!』 『これは失礼。 主殿に名を与えて戴いた事がとても嬉しく、つい遠吠えをしてしまいました。 お許しを……主殿』 『まあ今後気をつけてくれれば別に……』 『有り難き幸せ! 不肖、このリル! 主殿に一生仕える所存です! 主殿! 主殿! はっはっ!』  異世界に転生したわずか二ヶ月。  俺はフェンリルをペットにした。  なんというかこう、異世界モノの主人公っぽくなってきて、早くも楽しくなってきた。  明日は果たして何が起きるのか、今からとても楽しみだ。
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