現世の契り

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 ――ある世にて罪を犯した者は、その後の世にて生まれ変わった際、その報いを受ける。そして私の場合、最も重い罪を犯してしまった後の世は、決して愛する人と結ばれぬ運命(さだめ)となっています。  ……そして、何の因果なのか、その最も重い罪を犯した後の世に転生したのが現世(いま)の私――ここまでは、以前申し上げたかと存じます。……本当、怨んでも怨み切れないですよ、前世の私。  ……ですが、いくら嘆いたとて仕方がないのもまた事実。当然のこと、前世の行いを現世にて変えることなど皆目不可能なのですから。  ――ならば、現世(いま)を変えてしまえばいい。あれほど慈悲深く愛を注ぎ大切に育ててくださった、唯一無二の大切なお父様――そんな彼を、あろうことか我が意思にてこの世から葬り去るという、この上もない悪業(ごう)を背負った私は、必然来世にてその報いを受けることでしょう。  ――そう、現世ではなく来世にて。  
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