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「……誠にありがとうございます、中将様。その勿体なき深愛なお言葉だけで、私の心はとうに救済されております。……どうか、この一度きりの欠けがえのない生涯を、私と共に生きてくださいませんか?」
「はい、もちろんです。ですが、一度きりなどと申さず来世も、そのまた来世も……私達は、永久に共にあるものだと信じています」
「…………はい。願わくば、私も……」
私の問いに、望んでいた通りの……いえ、望外のお言葉を返してくださる中将様。……ええ、願わくば、私もそうでありたいと切に思っています。
……ええ、承知しています。私は、来世を犠牲にして現世を選んだ。あろうことか、大切な恩人の尊い命を無慈悲に奪い去ってまで。その報いは甘んじて受け入れる所存です。……尤も、現世の重罪を鑑みると、後の世はいっそう重度な報いが待ち受けているのかもしれませんが。
――ですが、それが何だというのでしょう。縦令、来世の私がどのような報いを受けようとも――現在、この瞬間以上の苦痛も幸福も、きっと何処にもありはしないのですから。
ふと顔を上げると、そこには溢れんばかりの愛情を湛えた中将様の瞳が。清流の如く透き通る、麗しき中将様の瞳が。そんな彼の力強くも柔らかな腕の中で、これ以上なく穢れた私がそっと心中にて宣告します。
――後の世は、どうぞ如何様に。お望みとあらば、餓鬼でも修羅でも参りましょう。ですが……現世だけは、誰であろうと――縦令、仏様であろうと決して邪魔はさせません。
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