祈り

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祈り

「――ところで、わざわざ私がこうして申し上げる必要もないかとは思いますが……お父様も、姫様を大変心配していらっしゃいました。苦労をかけるけど、どうか姫様を支えてあげてほしい――そのような旨のお言葉を、先日もお父様から頂きました」 「……ええ、私も存じてるわ」  揃った貝を合わせつつ、心配そうに言葉を紡ぐ七条(しちじょう)。先ほど私が口にした勝負というのは、貝合わせという当時代にて広く親しまれている遊戯の一種です。さて、どのようなルールかと申しますと……いえ、止めておきましょう。きっと無駄に長くなるだけでしょうし。  ところで、彼女の言うお父様とは、彼女自身ではなく私のお父様のこと。なので、私の命運――海よりも深く愛し合う男性と結ばれぬ悲運について、自身のことのように深く嘆き心配してくださっているのです。本当に有り難く……そして、(いた)く申し訳なく思っています。
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