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「そこまで話が進んでたんなら、先に言え。」 ジュードが紫煙をたちのぼらせ、苦笑いを浮かべた。フリーマンが暴動を目論んでいるであろうという推測が、仲間内ですでに結論として出ていることをジュードに明かし、Mは新たに「それはおそらく理事会に対する謀反だ」と付け加えた。 「ああそうだよ。俺の拘束期間が長かったのは、フリーマンに尋問を受けてたからだ」 「お前、奴の尋問によく2週間も耐えたな」 ブラッドリーが顔をしかめる。 「何も拷問されていたわけじゃない。むしろ逆だ。フリーマンがいやに優しくてな、俺のメシだけピザにしたり、執務室の固定電話を使って仲間達と電話もさせてくれた。だから俺が口を割るまで3日とかからなかったさ。1日でいっぺんには聞かず、何日にも分けていろいろなことを質問された。残りは、クルーニーの怒りが冷めるまでってことで無駄に延ばされてた期間だ。半月もブチ込まれてりゃ忘れるだろうと言われてな」 「お前、昔の俺の仲間だったらいちばん先に消されてるタイプだな。そんなことで釣られやがって。ちょろ過ぎるチクリ野郎だ」 「俺はお前らと違ってセコい犯罪者さ。違法風俗店の経営でパクられるなんてよくあるショボい話だろ。だがとはな」 「犯罪自体は仕様もねえけど、お前がやってた店はコソコソやるにはでかすぎた。だから……だからんだ。そういうのは店を分散させて儲けねえと」 「それにしても、Mはなぜジュードが理事会と絡んでることを知ってたの?」 ユアンが尋ねる。 「知ってたわけじゃない。だがもともと俺は少し前から理事会がクスリの密輸に絡んでいるとにらんでいた。それと並行してジュードがいつまでも独房から帰らないことに疑問を持ち始めて、日が経つにつれどんどんそれが膨れ上がっていったときに、フリーマンが故意にそうしてるとするなら、それはなぜかとも考えていた。そのときに何となくつながったんだ。ジュードは取り調べでも受けてて、それがフリーマンの独断で為されているのなら、理事会絡みのことを聞き出されてるのかもしれないとな」 煙を吐くと、コンクリートで揉み消したタバコを指ではじいて灰皿に捨てる。 「それにしても理事会の奴ら、クスリだけでなく違法売春にまで手をつけてやがったか。マフィア気取りか?あんまり手広くやると、こういう勘のいい奴に嗅ぎ付かれてゆすられて破滅するのになあ」 ブラッドリーがMに吸いさしのタバコを向けた。 「悪いことはよせ、と俺たちなんかがエラそうに言う資格はない。だが奴らは侵しちゃいけない領域というものをカンタンに跨いで汚しやがった。刑務所で依存者の更生を妨害してクスリをさばいて、ここを出てからも使えそうな奴は組織にスカウトし、もうひとつの管理下の女子刑務所から出所した奴には、手を組んでる売春宿に斡旋か。行き場のない奴らをうまいこと使ってる。社会復帰のチャンスを奪ってるんだ。アルやロバートだって、悪知恵は働くがまだ若い。密輸と手を切ればこれからどうとでもなるのに、理事会に目をつけられてるとすれば、一生、使いもんにならなくなって捨てられるまで、くだらない人生のままだ」 吐き捨てるようにMが言う。そのとなりでジュードは地面を見つめながら、うなだれるようにしてしゃがんでいた。 「なあM……保身で弁解するわけじゃないが、俺が斡旋を受け入れたのは金のためじゃない」 「バカみたいに儲けといてよく言うよ」 ユアンが苦笑いを浮かべる。 「ユアン、そう思われても仕方ねえのはわかるが、一応聞くだけは聞いてくれ。……あとその前に、悪いけどタバコをくれ。切らしちまった」 ユアンから数本を受け取り、火をつけて深く煙を吸い込む。深呼吸のように空を仰ぎ、遠くでバスケをしてはしゃぐライアンを見つめた。
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