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その騒動での死者は1名、重軽傷者は30名以上にのぼり、しばらくはマスコミ対策に追われ、警察の捜査も長引いた。
何人かの囚人が容疑者としてあげられたが、殺害の証拠を探すのはほぼ不可能であった。
ヨハンソンは頭を打って死んでいた。
混乱の中で負ったその致命傷が、過失なのか故意なのかも判断がつかなかった。現在も捜査中であるが、積極的な捜査はすでになされていない。ヨハンソンの殺害事件は、現在に至るまで犯人が分からぬままうやむやになっている。
そしてとうとうローレンスは、待ち望んでいたクロエをこの施設に迎えることとなった。
選任されたのは偶然であるが、彼女は問題の多い矯正施設で改善の成果をあげていたので、この最低最悪の刑務所に異動してくることもほとんど必然であると思っていた。そして予想通り、ヨハンソンの後任として彼女がここの新たな看守長として着任してきたのだ。
そのクロエが看守長として、副看守長のローレンスに最初に命じたこと。
「私とは反目しあったフリをしてくれ。この施設内では会話も業務上の最低限のことのみ。過去の関係も決して周囲に漏れぬよう気をつけるんだ。……理事会が私を受け入れたのは、今回の暴動による州の要請で、やむを得ずだ。彼らは私を排除したくてたまらないだろう、大事な"ビジネス"の邪魔になるからな。だから私とのつながりを決して見せるな」
施設から遠く離れた町のレストランで落ち合い、クロエはローレンスに忠告した。しかしローレンスはすでに意志を固め、ある作戦を決行していたことを明かした。
口の軽いイーストウッドの"情婦"となり、理事会の陰謀にまつわる証拠をかき集めている。
それを行使して暴くためには、クロエの知恵と手腕が必要となる。
イーストウッドとのセックスに抵抗はない。すでに奪われるものなどはない。
様々な犠牲を伴うこととなっても、理事会を駆逐しなければ腐敗が広がっていくだけである。
クロエが是とすることは、死すらも是である。
それらのことを淡々と告げると、涙をこらえていたクロエは、それが流れ落ちる前にハンカチで拭った。
そして力強い眼差しを取り戻し、はっきりとこの腐敗を打開するために闘う決意を固めた。2人の関係は今までとは大きく変わり、あの日に話したとおり、正真正銘の"相棒"となったのだ。
「やはり私たちは運命共同体だ。明日からよろしくな、ミスター・ローレンス」
「こちらこそ。最後まで相棒でいましょうね。……"鬼軍曹"のフリーマン看守長」
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