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Ⅸ
《あなたから電話がくるたび安心する。早く会いたい。毎晩不安で仕方ない》
《俺も毎晩不安だ。お前が他のヤツと同じベッドで寝てないかと考え出すと眠れない》
《こっちは真面目なんだぞ。それなら言ってあげようか、僕は早くあなたとセックスしたくてたまらない。身体がヘンになりそうだ》
《わかった、悪かった。俺だって頭がヘンになってる》
《今日もマキシマムズのことで?》
《いや……何となくだ》
《何それ。なんか不吉》
《不吉でもいいさ》
《……マキシマムズでさ、本部とロードがつながってるって言ってたね》
《ん?ああ……そうだな》
《……まあそのハナシは今はいいや》
《?》
《ところで、マイケルとルーカスのこと、覚えてる?》
《……ああ。覚えてる》
《うちの店に、2人で来てた》
《……何?》
《おとついの夜。軽くお酒を飲みにね。僕は何回か見てるから、2人の顔よく覚えてる。向こうは気づいてなかったけど》
《マイケルとルーカスは、仲が良くないもんだと思ってたが……》
《わざわざ遠くのうちの店に来てるんだから、仲良くしてるのを地元の奴らに知られたくないんじゃない?》
《何話してたか分かるか?》
《会話まではちょっと……。でも、雰囲気は良かった。腹の探り合いとか、そんな感じではなかったな。親子のようだった》
《そうか……そうなると……ビリー、マイケルの協力者はルーカスだな。ルーカスが諜報員の役割をしていたんだ。……地元でな。だから……》
《だと思う。でもそれを知ってどうする?何か意味はある?》
《何もない。古い仲間だ。もうあいつらとは縁を切ったしな。マキシマムズの話をしていいか?》
《うん》
《ロードは本部とつながってるフリして、本部の寝首を掻こうとしてる可能性がある》
《……そうなるね。それが2人の任務の目的?》
《マキシムの前の奴が、任務の最中に殺られてる。殺ったのは誰か……シーズン1じゃ解明されてないからまだ分からない。だがもしも、それがロードだとしたら?》
《マキシムの前任をロードが消したってこと?》
《そうだ。いま、たったいま浮かんだことを話すぞ。わざわざ任務をやる意味。ロードが本部にスパイ活動をしてたなら、その証拠をかき集めて、本部の上の組織に告発すりゃあいいだけだ。しかしわざわざ任務を遂行しようとしている。ドラマだから派手なほうがいいんだろうが……だが違う》
《ロードも本部に弱みを握られてる?》
《おそらく。その、前任を殺ったところを見られたのかもしれない。だからどさくさ紛れにその弱みを握ってる奴を殺るか、あるいは……俺なら、交換条件を出す。本部の悪事を黙っててやるから、そいつが見た自分の悪事も黙っててもらうよう、脅しをかける。それを破るならば必ずすべてをマスコミにさらすなり何なりする。芋づる式に一網打尽で捕らえられるのと、今すぐそいつらのビジネスを「ここ」だけでも取りやめるのと、どちらがいいか選ばせるんだ》
《まあ、それが自然だね。……でも、ねえ、これ以上この話をするのはやめよう。僕は自分で推理するのを楽しみにしてるんだ。あなたの考えがいちばん自然だし、正解だと思うけど、とにかく終わりだ。お願いだからおとなしく観るだけにしてくれ。なんにもしないで。早く会いたいから》
《ビリー、男だろ。ドンと構えてろ。時間だ。切るぞ》
《愛してる》
《…俺も》
「やあ、M」
共同のシャワー室。マシューは混雑を嫌うので、いつも空いている時間に浴びる。Mは彼の使っている仕切りに入ると、その身体を後ろから抱き、首筋に軽く噛み付いた。目隠しなどはないので、誰かに見つかれば本来なら独房行きだ。
「今日は面会じゃないだろ」
「………」
「恋人が知ったら怒るぞ」
マシューの腰にはすでに硬くなって勃ちあがったMのペニスが当たっている。耳を舐められ、キスをする。シャワーの時間が決まっているため、すぐにねじ込まれて立ったままバックで突き上げられた。細いマシューの腰をつかみ、シャワーに濡れながらピストンをする。
この体型がビリーとよく似ている。目をつぶればビリーがいる。マシューは切なげな声で鳴きながら、Mの強烈な突き上げにその身を震わせ、耐えた。
そのあと一旦抜かれて、向かい合わせにされると、まるで人形のように抱え上げられた。
「や、だめ……」
ひときわ大きな声をあげる。Mに抱えられたまま、その大きなペニスが容赦なく腹の奥深くに刺されていく。つながったままキスをされ、キスをされながら激しく突き上げられる。
彼のたくましい身体にがっちりと固定されるが、そもそも力も入らないので、なすがままだ。肩に抱きつき、広い背中に手をまわす。壁に押し付けられ、Mの動きが激しさを増し、マシューは涙を流しながら声を漏らさぬよう堪えた。
「……くっ……」
ドクドクと、中でペニスが脈打っている。精子をすべて放出され、マシューはヒクヒクと痙攣した。射精しながらMがまたキスをしてきて、マシューも力なくそれに応じた。そして、抱えられて壁に押し付けられたまま、Mはそっと耳元でささやいた。
「俺も任務の仲間に入れてくれ」
「え………?」
「フリーマンとローレンスのニンジャなんだろ?……仮出所を控えて乗り気じゃなかったが、暴動をやるなら俺を仲間にしたほうがリスクは軽減させられると思う」
「なぜ僕を……」
ミネがペニスを引き抜くと、マシューはそのままずるずると壁沿いに崩れ落ちた。
「俺らがこういう関係だからさ。いろいろ、イチから話すのは面倒だ。けどフリーマンが自分の暴動に使う兵隊は、冷静で賢くて信用があって、なおかつ俺ともっとも親密な奴を選ぶんじゃないかって思ってな。親密なほうが俺の目を逸らしやすい。まあ全部アダムの入れ知恵だ」
マシューの手をつかみ、そっと立ち上がらせる。
「俺も混ぜろよ。いいだろ?どうせ巻き込まれるんだし、終わるまでじっとしてるのも退屈だ。それに俺はこの作戦に加担したい。ジュードと同じように身の程知らずなことをいうが、このタイプのいけ好かねえ悪党はイラつく。極力叩いておきてえし、早くライアンたちにまともな治療を受けさせたい。お前も同じはずだ」
シャワーを止める。ずぶ濡れのマシューが、ミネの手を握ったまま、こくりと小さくうなずいた。
「とりあえず暴動の火付け役を教えてくれ。効率的な暴れ方を教えてやるから。触発されて暴れ出す無関係の奴もできるだけ抑えたい。囚人の面倒な被害は最小限にして、クソッタレの理事会の首をさっさともぎ取ってやろう。それから……」
マシューの髪をタオルでぐしゃぐしゃと拭きながら、ミネがニヤリと笑った。
「フリーマンには出世してもらおう。たかだかちんけな刑務所の看守長にしとくのはもったいない女さ」
「え?」
「作戦がうまくいったら、法務局に理事会のメンバーを編成し直してもらう。全部吐かせて、それを撮ったテープなりなんなりを叩きつけりゃ1発だろ。マスコミに知られたら世界中に騒がれて、局員全員のクビごときじゃ済まねえぞ」
「そうだけど……そこまでうまくいくかな。フリーマン看守長を理事長にってことだろ?彼女はそこまで望んでないと思うけど」
「ここまでやるんなら腹をくくってもらおうぜ。奴に実権を握らせりゃあ、多少なりともこの町ごと変わるだろう。なんせ刑務所と理事会という、町のバイキンの温床を一層するんだ」
「そこまでする意義が君に?」
「意義はないが見返りがほしい。フリーマンにいろいろと聞いてもらいたいことがあるんだ。ここを出てからのことと……仮釈まではメシに肉もつけてほしい」
「ずいぶん欲張りだな」
「やれるだけやってみる。だが少しでもライアンたちがラクになるなら、それだけでいい」
「君がシャワールームで僕のことレイプしたって、フリーマンに言ってもいい?」
「なんとでも」
2人はしばらく見つめ合ったが、先にマシューがニヤリと口元を歪めると、いつものようにクスクスと笑い合った。
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