サプライズ

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サプライズ

 明日川(あしたがわ)中学校の卒業生たちが、10年ぶりに会した。  幹事を務めたアカリは、受付から久しぶりの同級生たちを眺めた。  ――あれは、陰キャの田村? うそ、なんかイケメンじゃん。それで……もしかしてあの子がギャルミナ? めちゃくちゃ落ち着いたなあ。ていうか、判別出来ない人、多すぎでしょ……。  アカリは苦笑を浮かべながら、自分は周囲からどのように見られているのだろう、そんなことを思った。手に取った手鏡で前髪を揃えると、その向こうに、貸し切ったダイニングバーの入口が見えた。  誰が寄贈してくれたのやら、豪華すぎる花環(はなわ)が飾られていて、その前で嬉々として記念撮影をする同級生たちの姿。まるで何かの開店祝いのようだなと、アカリは無言で口元を緩めた。  楽しそうな同級生たちの表情を見ながら、アカリは受付に置かれた出席簿に目を落とす。ひとりひとり照合するかのように、名前と出席者とを交互に見比べ、各々とのエピソードを心のなかで探した。  しかし、とある名前の参加可否欄に「◯」が付いていないことに気が付くと、驚いて目を見開いた。 「あれ! ユウノが来てないじゃん!」 「――え!? マジ!?」  思わず大きめの独り言をこぼしたアカリの周囲に、同じように驚いた同級生たちが駆け寄ってくる。男女問わず自然と集まってくるあたり、ユウノの存在感の大きさが透けて見えるようだ。 「ユウノって、この同級会の発起人の1人でしょ?」  アカリは動揺を隠せない様子のまま頷いた。 「そうだよ。私とユウノと小泉くんが、たまたま電車に乗り合わせてさ。そこで集まろうってなったの……」  アカリはそれほど積極的な人物ではなかった。幹事を買って出たのも、ユウノの後ろ盾によるところが大きい。昔から可愛くて、明るくて。みんなの憧れだったユウノの存在が勇気を与えてくれたのだ。  アカリの言葉を聞いて、同級生たちは一様に首を傾げる。 「じゃあ、やっぱ来てねえのは変だな」 「アカリちゃん、ユウノにラインしてみれば?」 「だな。事故とかだったらヤバいし」  アカリはコクリと頷くと、鞄からスマホを取り出す。  慣れた手付きでラインを起動すると、『同級会かんじーず』というグループのトークを開いた。そこでユウノをメンションしてメッセージを打つ。 『@ユウノ  もう始まってるよ。今どこ?』 「案外忘れて、寝てたりして」 「ユウノならあり得るから困るわ」  同級生たちが笑っていると、意外にもすぐに既読表示がつく。  そして程なくしてユウノから返信が届いた。集まったメンバーがそれに気付いてスマホを覗き込む。そしてその内容を見て全員が凍りついた。 『ごめん、同級会にはいけません。』
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