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待っていて
「……読めない」
「そう、わからないんだ」
差し出し人も住所も、達筆な筆記体の英語で書かれていた。
どこの国なのかも、読めなくてわからない。
「生きてはいる、が、連絡も取れない」
「……お父さんは、会いたい?」
お父さんは、止まった。
イスにまた腰かけるでもなく、私を見つめるでもなく、静かに視線を反らす。
少し、酷な質問だったらしい。
「いや、なんでもない! じゃあ、もし場所がわかったら、私一人でお母さんに会いに行ってもいい?」
「そんなことできる訳……」
「ネットで調べれば情報は手に入ると思うんだよね!」
私は、不安の色を隠せていないお父さんをよそに、携帯電話でハガキの写真を撮る。
「もし、本当に海外だったとしたら、お前……」
「私は、お母さんみたいにいなくなったりしないから!」
それだけ言うと、とりあえず準備されてあったケーキを頬張った。
あなたに会いたい。
大人になった娘を、私を、見せてあげたい。
待っててね、お母さん!
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