成人

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成人

「私も、今日から成人だよね?」 「そうだな、今は二十歳じゃなくて18歳から、だな」  私は軽く拳を握る。 「きちんと、自分で責任を持って行動するから……!」  今しか言えない、今じゃなきゃ言えない。 「私、お母さんに会いたい、会いに行きたい!」  テーブルのケーキはそのままに、私はお父さんにそう告げた。  お父さんは、覚悟はしていたかのように、焦る様子もなく、ただ目を細める。 「今まで疑問に思ってても、聞いてこなかったんだろうしな……」  お父さんは、席を立つ。 「会えるか会えないかと言えば、会える」 「ほんと!?」 「だが、お父さんだって、どこかはわからない」  そう言うと、お父さんは茶箪笥から一枚のハガキを取り出した。  年賀状なのだろうか、大きな写真とハッピーニューイヤーのロゴだけが書いてある。 「毎年、一枚だけ、年賀状シーズンに送られてくるんだ……お母さんから」  私は、慌てて差し出しの場所を見た。
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