誕生日

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誕生日

 私には、お母さんがいない。 いや、正確には、いなくなった。  ずっと昔には、いた気がする。  でも、それもとても曖昧なくらい遠い日の記憶。  お父さんに聞こうにも、いざ聞こうとすると、言葉が喉につっかかって聞けず終い。  一緒に手を繋いでお散歩をしたり、一緒にお布団に入ってねむってくれたり、一緒にフードコートで昼食をとったり。  そんな他愛のない親子をやっていた記憶は、薄れつつあるが、ある。  どうしていなくなったのか、いつからいなくなったのか、それは私にはわからない。  聞かなければ、永遠と謎のままである。  今日は、私の誕生日。18歳になった。  父がショートケーキに1と8のろうそくをさしてご馳走してくれる。  私はゆらぐろうそくの日を眺める。 そうだ、こんな記憶も断片的にある。 「今日で成人だね、おめでとう」 「ありがとう……あのさ、お父さん……」  遠い日の記憶を胸に、意を決して私は口を開いた。
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