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「……な、何?」
ただならぬものを感じて、リアは思わず首をかしげる。
と、ブルークは深々と頭を下げた。
「頼む! また力を貸してほしいんだ」
「はあ?」
思わず大声を上げてしまってから、リアはあわてて口をふさぎ、周囲を見回す。
幸い店の中には二人以外客は無く、店員も厨房で忙しげにしておりこちらを気にしている様子はない。
「一体どういうこと? 魔物はいなくなったんでしょ? それを今更……」
そこまで言って、リアの脳裏に嫌な感覚がよぎる。
「まさか、あの魔物達がまた……?」
しかし、ブルークは予想に反して首を左右に振る。
「じゃあ何なの? 泣く子も黙る英雄様が、しがない薬師兼治癒師を頼るなんて」
若干の嫌味を込めて尋ねるリア。
漆黒の瞳にじっと見つめられて、ブルークはようやく本題に入った。
「実は、盗賊退治の命令がくだった」
「ふーん、それで?」
最近街道筋にたちの悪い盗賊が出ているという話は、リアも知っている。
つい先日も隊商が襲われて、荷物が奪われたという。
「騎士団の中から志願者を募って、近々討伐に出る」
「だから?」
「討伐隊に、ぜひ……」
「お断りします」
ブルークの話が終わる前に、リアはにっこり笑って即答した。
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