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「話はまだ終わってないだろ? ちゃんと聞いてくれよ」
「聞くだけ無駄」
「そこを何とか!」
あまりにも必死なブルークの様子に、関わるまいとのリアの決意が揺らぐ。
しばしためらったあと、リアは口を開いた。
「だって王様の命令なんでしょ? あたしより優秀な治癒師や薬師、いくらでも見繕えるんじゃない?」
「あいつらは座学はできても、実地じゃ使い物にならねえよ」
なるほど、と納得して、リアはため息をつく。
権力に擦り寄るタイプの治癒師や薬師は、試験には強いが実務経験が無いことが多い。
下手をすると、血を見て気絶するような有様だという。
「だから頼む。いや、お願いします。力を貸してください」
テーブルに両手をついて、ブルークはさらに深々と頭を下げる。
都から遠く離れたこの街にとって、確かに盗賊の出現は由々しき問題だ。
様々な物資が入ってこなくなれば、いずれこの街は干からびてしまう。
被害の少ない今のうちに叩き潰しておくべきなのかもしれない。
けれど、ブルークの話にのるのは癪に障る。
現に頭を下げて入るものの、ブルークは上目遣いにリアの様子をいたずらっぽくうかがっている。
それに、討伐の旅は生半可なことではない。
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