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運良く宿に泊まれれば問題ないのだが、下手をすれば野宿が続くこともある。
一戦交えたあとにそんな状況に陥れば、血泥と汗にまみれたまま旅を続けることとなる。
その匂いたるや、想像を絶するものがある。
けれど、とふとリアは考える。
自分は、なぜこの職に就いたのか。
苦しんでいる人を助けるためではなかったか。
沈黙が続くこと、しばし。
ついにリアは顔を上げ、口を開いた。
「……返事は、すぐには出せない。あたしは今、薬局の店員なの」
「んなもん、やめちゃえばいいじゃん」
あまりにもお気楽なブルークの言葉に、リアは深々と息を吐き出す。
「仕事辞めたら、その後はどうやって食べていけばいいの?」
「討伐が成功すりゃ、陛下がいい職場紹介してくれるんじゃないか?」
「あたしはそういうの、苦手なんだってば」
やれやれとでも言うように髪をかきあげて、リアはさらに深々と息をつく。
「じゃあどうするのさ?」
無邪気にこちらを見つめてくるブルークに、リアは重々しくこう告げた。
「店長に有給を申請してみる。返事はそれ次第だから」
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