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「休憩、ありがとうございましたー」
言いながら、リアは店に戻ってきた。
そのまま、奥の机で何やら調合している店主の脇に立つ。
「ああ、お帰り。早速だけど、熱冷ましが切れてるから、至急調合を頼むよ」
「その、店長……。お願いがあるんですが……」
刹那、店長の手が止まる。
ずれた眼鏡を直しながら店長はリアに向き直り、苦笑を浮かべながら口を開く。
「やれやれ、給料の前借りかい? 研究熱心なのはわかるけど、あんまり高価な薬草に手を出すのは感心しないなあ」
「いえ、そうじゃなくて……」
すう、と大きく息を吸うと、リアは勢い良く頭を下げた。
「有給をください! お願いします」
そんなリアの様子を店主はしげしげと眺めながら、白髪混じりの頭をかき回す。
「改まって言うから何事かと思ったら、なんだ、そんなことか」
あまりにも呆気ない言葉に、リアは拍子抜けしたような表情を浮かべる。
一方の店主は、机の引き出しをごそごそと漁り、何やら一枚の紙を取り出した。
「……これは一体、何ですか?」
「有給の申請書。書いて出してくれないかな?」
手渡された紙を、リアはしげしげと眺めやった。
いつからいつまで、そして有給の取得理由を書く欄がある。
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