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 目に見えて落ち込んだようなリア。  店主は手にしていた本を棚に戻すと腰を下ろし、改めてリアに向き直った。 「後は、それに傷が付かない方法だと……」 「何かあるんですか?」  間髪いれずに問い返すリア。  その勢いに気圧されまいと店主はわずかに姿勢を正す。 「技能習得のための研究っていうのがあるけどね。休職扱いになっちゃうけど、どうだろう」 「つまり、盗賊討伐が治癒術行使の実地訓練と認められればいいんですか?」  しかし、これを取るためには取得後に事細かなレポートの提出が義務付けられているという。  果たして混乱する討伐現場で、逐一そんなものを書いている時間はあるだろうか。  いや、そんな暇あろうはずもない。  つまりは、都合二十七日間で帰って来なければならないわけだ。  手にした有給申請書に視線を落とし、リアは思わず黙り込んだ。  さて、どうするか……。 「ちなみに、仮に全部使い切ったとしても、これとは別に夏季休暇の三日は付与されるから、その点は心配ないよ」 「……はあ」  これはもう一度、色々と考えてみる必要がありそうだ。  リアはこの日何度めかのため息をついた。
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