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 フルメイ国のレカ街。  街道筋にあるこの街の中央通りを、一人の旅人が歩いていた。  身なりといえば、均整のとれた体躯に革の防具身につけ、背には長剣を背負い、毛羽立ったマントを羽織っている。  顔立ちは整った部類ではあるが、右の頬にはうっすらと傷跡が浮かび上がっている。  口もとにはわずかに笑みを浮かべているようではあるが、とび色の目は油断無く周囲に注意を払っているように見える。  その隙のない様子から察するに、ただの旅人ではないようだ。  やがて、旅人はふと足を止めた。  タモナ薬局、そういう看板がかかっているその店の店頭で、彼は店内の様子をうかがっている。 「……なにか御用ですか?」  それを不審に思ったのだろうか。  店の奥から現れた店主が、いぶかしげに声をかける。  と、旅人は慌てて姿勢を正した。 「失礼しました。自分は、ブルーク・ブルーと申します。こちらにリアナ・ビーズ嬢がいると聞いて王都から来たのですが」  礼儀正しく自己紹介すると、旅人……ブルークはすっと頭を下げる。  そんな旅人を、店主は腕を組み眉根を寄せてじっと見つめている。  そして、店主が口を開いたまさにその時だった。 「遅くなりました。ただいま配達から戻りました」
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