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芳江は死んだのに、彼女の勤める職場の都庁から何とも言ってこないのが真一には不思議に思えていた。
金曜日の午前中に、彼の職場から芳江の勤める東京都庁舎に電話をかけて話したが最初のうちはいたずら電話と勘違いしたような扱いであった。
「どちらの方ですか?」
「三田です」
「何に関する話をしているのですか?」
「妻に関する話です」
「それではあなたはどなたですか?」
「三田芳江の夫です」
「三田さんの旦那様さんですか?」
「はいそうです。三田真一というものです」
「わかりました。それでどうしましたか?」
「妻の芳江に関することで話したいのですが」真一は聞いた。
「三田さんの他のご家族にも聞かれましたが」
「今私の妻は何をしていますか?」
「それなら他のご家族の方にも言いましたが」
「それではいま芳江はどこにいますか?」
「今、芳江さんは出張に行っています」
「生きているのですか?」。
「生きています」
「詳しいことは?」
「個人情報保護法に反するので答えられません」と芳江の同僚は言った。
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