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第8話
不思議と、事件が解決したころには、嵐も収まった。水樹たちは甲板に出て、理人・水樹・陽希の順で並び、穏やかになった海を見詰めた。
港までは、まだ何日かかかりそうである。
「今回も水樹は名推理でしたね」
「うん、本当。水樹ちゃんのお陰」
理人が言っても、陽希が言っても、水樹は何も言葉を発さなかった。
遠く水平線に沈む夕陽は、まるで燃えさかる炎のように赤く染まっていた。空はオレンジとピンクが混じり合っている。
「これで『探偵社アネモネ』の名も売れちゃうと良いなぁ」
陽希が頭の後で手を組んでのんびりと宣う。しかし、矢張り水樹はじっと黙っている。
空の色は、やがて深い青、黒へと変わっていった。波は静かに揺れ動きながら、月明かりを浴びて白く輝いている。
そろそろ部屋に戻りましょうか、の「そ」を言いかけたところで、やっと、水樹が口を開いた。
「夕間暮れ……」
あの美しい夕陽が、疲れた心を癒したのであれば良かったと、理人は思ったのだった。
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