理想型ファッション

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理想型ファッション

 わたしの理想は、橘高文彦。  知る人ぞ知る『筋肉少女帯』のギタリストである。  言うても、筋少の曲はあんまり知らんねん。  ヴォーカルの大槻ケンヂ本人が語っていたように、彼に歌唱力があれば、筋少はヘヴィメタルバンドになっていた、と。  ギターの橘高は、メタル畑の人なので、髪を長く伸ばし、フリルのついたブラウスを着、スキニーパンツにロングブーツを履いていた。  彼は、様式美系メタルギタリストの中でも、とりわけフリルの似合う男である。 「貴公子や。」  初めて雑誌で彼を見た時の感想であるが、実際の彼は、大阪の雀荘の息子である。  ほんでもって、フライングVが似合うのよ。  彼は、‘Euphoria’名義のソロプロジェクトで、彼本来のスタイルの様式美系メタルの曲とプレイを披露した。  わたしのメタルを聴くきっかけとなったのは聖飢魔Ⅱやけれども、その後、音楽雑誌や予備校時代に知り合ったメタルやプログレに精通している子から知識や情報を得て、メタルの中でも「様式美系」と言われるものを好むようになった。  様式美系の人たちは、フリルやレースに、スキニーパンツかレザーパンツ、そして白や黒の編み上げロングブーツかウエスタンブーツを履いていた。  前にも書いたと思うが、わたしの母はロックに理解がないし、「ロックは不良がやるもの」ちゅう固定観念に囚われた世間知らずな人間なので、わたしが大学に入学するまでは、ライヴに行くことも、バンドを組むことも許さんかったけれども、進学先が決まると、渋々ながらもそれを許した。  入学したのが公立の大学ということもあり、普段は地味にしていたけれども、ライヴの日だけは別で、普段あまり穿かない黒のロングスカートやこの日のために小遣いで購入したダークグレーのレースアップのカットソーに、網タイツ、そして少しヒールのあるパンプスを履いたり、長期休暇にバイトをして貯めて購入したウエスタンブーツやレザーパンツを着たりして、別に誰に見られる訳でもないのに気合いを入れていた。  あ、けどね。ライヴはライヴなりのTPOってあるんよね。ヴィジュアル系入ってると特に。  ほんまはフリル満載のブラウスを着たかったけど、 「後で、綺麗にアイロン掛けられへんかったら、めちゃめちゃ不細工になるなぁ。」 と、何故かそこだけは冷静に判断し、購入を見送った。  メタル好きでもない同級生が、ナラカミーチェのフリルふりふりのシャツを着て、女子会に現れた時は、 「やっぱり、わたしも着たい。」 と思うたが。  因みに、ナラカミーチェの綴りが分からない。調べたら済む話やけど、調べる程の思い入れもない。  その後、色々あり、メタルっぽい格好をせんようになったり、できひんようになったりしたが、この一年程原点回帰しつつあり、年甲斐もなく網タイツを穿いている。  当時のウエスタンブーツやレザーパンツは手放したが、アイロン掛けのしやすい大人しめのフリルが付いたブラウスも時々着ている。  今年は、レースも着ようかな。 「引っ掛けて、糸出したり、解れさせたりしてまうねん。」 なんか言いながら。
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