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52ヘルツのクジラとは、そもそも何を指すのか。
ある海洋博士が、海中でおかしな音を拾った。
軍事的な暗号ではないかと調べてみると、どうやらそれはクジラの鳴き声だとわかった。
それが周波数52ヘルツの鳴き声だった。
同時に、52ヘルツで音を出すクジラは、この個体だけということもわかった。
クジラは独特の鼻腔構造を持ち、鼻の奥にあるひだを震わせて音を出している。
通常の周波数は、10~39ヘルツ。
52ヘルツのクジラはこの構造が奇形で生まれたのではないか。と推測された。
52ヘルツの声では、他のクジラには届かないことから「世界一孤独なクジラ」と呼ばれている。
この本の題名「52ヘルツのクジラたち」は、声をあげているのに、その声が外に届かない人たちがいる、というメッセージになっている。
虐待を受けて泣いている声、孤独の悲鳴を上げている声、誰かに助けを呼んでいる声。
彼らの声は、52ヘルツのクジラのように、世間には届かない。
最後に主人公のセリフをひとつ紹介したい。
『ひとには魂の番がいるんだって。愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のようなひと。あんたにも絶対いるんだ。あんたがその魂の番に出会うまで、わたしが守ってあげる』
魂の番だけには、届くんだろう。
見つけてもらえるんだろう。
どんな声で鳴こうとも。
耳を傾けよう。
すぐそばにいるかもしれない。
同じ周波数で鳴き合える、魂の番が。
その日を信じよう。
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