「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ

2/2
前へ
/65ページ
次へ
52ヘルツのクジラとは、そもそも何を指すのか。 ある海洋博士が、海中でおかしな音を拾った。 軍事的な暗号ではないかと調べてみると、どうやらそれはクジラの鳴き声だとわかった。 それが周波数52ヘルツの鳴き声だった。 同時に、52ヘルツで音を出すクジラは、この個体だけということもわかった。 クジラは独特の鼻腔構造を持ち、鼻の奥にあるひだを震わせて音を出している。 通常の周波数は、10~39ヘルツ。 52ヘルツのクジラはこの構造が奇形で生まれたのではないか。と推測された。 52ヘルツの声では、他のクジラには届かないことから「世界一孤独なクジラ」と呼ばれている。 この本の題名「52ヘルツのクジラたち」は、声をあげているのに、その声が外に届かない人たちがいる、というメッセージになっている。 虐待を受けて泣いている声、孤独の悲鳴を上げている声、誰かに助けを呼んでいる声。 彼らの声は、52ヘルツのクジラのように、世間には届かない。 最後に主人公のセリフをひとつ紹介したい。 『ひとには魂の番がいるんだって。愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のようなひと。あんたにも絶対いるんだ。あんたがその魂の番に出会うまで、わたしが守ってあげる』 魂の番だけには、届くんだろう。 見つけてもらえるんだろう。 どんな声で鳴こうとも。 耳を傾けよう。 すぐそばにいるかもしれない。 同じ周波数で鳴き合える、魂の番が。 その日を信じよう。 050306ba-08cf-4d9f-a018-0e2caaf61e0b
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加