愛鷹山水神社。

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拝殿は開かれていて、一般の人も入ることができた。 靴を脱いで中に入ると、宮司の席があってその先に神様が祀られていた。 丸い鏡のような神具も祀られている。 壁に貼られている地域のお知らせとか、祈祷の案内だとかを読みながら、壁に沿って歩いた。 龍神の絵もいくつかあった。 参拝も見学も済んだけど、なんとなく離れがたくて、部屋の隅に座った。 なんだか、みょうに落ち着く。 動きたくない。 心の中で、神様と話をする。 もちろん独り言。 特別な話はしない。 例えば、ここは良いところですね、みたいな世間話。 そうして時計の針が正午を指したのを機に、 「足がしびれて来たんで、もう行きますね」 やっと立ち上がることができた。 a6b761a2-d950-4531-aaf2-4688b4d0d597 ところが。 拝殿の階段で靴を履こうとしたけど、足を投げ出したまま止まった。 8d8090a1-fc9e-4171-9375-527c95c71f42 滝の音が聞こえていた。 時々、鳥の囀りも。 線香の甘い香りも心地いい。 そういうの全部が、特別な空間を作り出していて。 完結した世界がここにある、みたいな。 できることなら、ずっとここに座っていたかった。 00124fae-5233-41c7-9ce1-31b83f793f81
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