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もうわしらは夫婦になってから50年以上経つ。そんなことだから、わしもばあさんもシワがかなり目立つようになってきた。白髪も増えてきた。それに少し走るだけで疲れてしまうなど体力もかなり落ちてきた。ただ、ずっと仲良しであること、それは今日まで変わたことはない。
でも、少しだけ50年前とは体の変化以外で変わったところがあるのかもしれない。
今日は久しぶりにばあさんとショッピングモールへお買い物に来た。
「あれは若夫婦かしら」
おばあさんがふとそんな事を言う。わしも視力がだいぶ落ちた目でそちらの方を見ると手を繋いで仲良さそうに歩いている男女がいた。そして2人の手にはわしらのよりもキラキラとした指輪がはめられていた。たぶん、ばあさんの言うように若夫婦なのだろう。
「何食べたい?」
「んー、私はハンバーグがいいかな。でも、おそばの方が好きだったっけ?」
「いや、俺はハンバーグも好きだからいいよ。今日はおそばよりもハンバーグの気分だし」
「えー、本当? でもそれじゃあ私だけがな―」
どうやらその若夫婦はお昼ごはんの場所について決めているようだった。確かに、わしもお腹が空いたかもしれない。若夫婦の会話に思わずお腹がなってしまう。
「ふふっ、では私たちはお寿司にしましょうか。今日はお寿司食べたい気分なんでしょ?」
「おー、よくわかったな」
「そんなの、わかるに決まってるでしょ」
お寿司食べたいなんて一言も言っていないのにおばあさんはわしの食べたいものを当たり前かのようにすんなりと当ててしまった。
「じゃあ、行きましょうか」
「そうだな」
わしらはその若夫婦の横を通りお寿司屋さんの方へ足を進める。
この50年間で変わったこと、それはこういうことなのかもしれない。
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