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優成と矢川くんが仲良く連れ立って出ていったその後、俺は斗亜にからまれて彼の怪我の処置が終わるのを待っていた。本当は優成について行きたかったけど、聞きたいことが色々とあったから。
「見てよぉ、これ!絶対アザになるじゃん!力抜けてた状態でこれとか、あのゴリラめ……」
ブスくれた顔で文句を言う斗亜の腹には大きな湿布が一枚貼ってある。腹を壊しそうだなと思いつつ、斗亜がその怪我をおった原因を思い出し自然と顔が強ばった。
相変わらず目ざとい斗亜はわざとらしく目をうるませて俺の顔を覗き込んでくる。
「はるはるぅ、顔怖いよぉ?」
「……別に」
「僕に言いたいことあるんでしょ?」
「言いたい、こと……」
そう聞かれれば言いたいことが山ほど浮かんできて逆に言葉に詰まった。優成にどうしてあんなことをしたのか、優成のことが好きなのか、キスの他になにかしたのか、どうやってペアになったのか。
……あぁ、あと、優成のあの怪我まで斗亜の仕業だとは思いたくないな。
「あっ、一応言っとくけど、優ちゃんが手怪我してたのは僕のせいじゃないからね?あの子の自爆」
俺の心を呼んだかのようなタイミングで斗亜が言う。その言葉にほんの少しだけ肩に入っていた力が抜けた。
「それは、よかった」
安心して漏らしたその言葉に、斗亜は「さすがに怪我はさせないって〜」と軽く言って笑った。もし怪我までさせていたとしたら、俺は斗亜のことを本気で拒絶していただろう。
小学生からの幼なじみである彼のことを完全に嫌いたくは無い。
「他にも言いたいことあるでしょっ?」
斗亜が俺の腕をつかんで揺さぶってきて、恐る恐る口を開いた。
「優成のこと、好き、なのか」
どの口が聞いているんだろう。自嘲的になって目を逸らしながら言った言葉に、面白がるような声がかえってくる。
「えぇ、ないない!僕の性格知ってるでしょ?楽しく遊びたいだけー!」
「遊びたいって……」
「あの気強そうな澄ました顔ぐちゃぐちゃにしてプライドバキバキにへし折りたいよね〜!しかも性的なことに疎いとか最高じゃん」
「なに、を」
「僕みたいに弱そうな相手には本気だせないタイプだよ、アレ。怪我させないようにってストッパーかかっちゃうんだろうね。だからチャンスある」
何を想像したのか、斗亜が口角を吊り上げて可愛らしい顔に不釣り合いな肉食獣のような笑みを浮かべた。
……あぁ、やっぱり斗亜はタチが悪い。
「もしかしたら矢川ちゃんも優ちゃんのこと好きだったりしてね!仲良すぎない?あの二人〜」
ご機嫌な声で言う斗亜の顔をそっと押しのけた。胸の辺りがムカムカと気持ちが悪くて、目の前のこの男を思い切り突き飛ばしたくなるような衝動が渦巻いている。
「……人間関係をかきまわそうとするな」
「えぇ、面白いのにぃ。僕があいつのこと犯したらはるはる怒っちゃう?」
「許さない」
自分でも驚くほどに威圧感のある声が出た。
想像しただけでも許せなくて怒りが湧き上がってくるのに、俺は彼のことを自分のものにしてしまいたいと思っていて、そんな矛盾した感情で気分が悪くて。
「おもしろ〜。はるちゃんがそんなに怒るのはじめて見ちゃったかも」
斗亜は全く動じる様子がなく興味津々といった様子で身を乗り出してくる。優成に対しての興味にくわえて俺をかき回して楽しみたいのもあるんだろう。そういうやつだと分かっている。
でも、どうしようもなく腹が立ってしょうがなかった。
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