はじまりとおわりのさくら。

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卒業式の日。 人が空いた頃を見計らっていつも通り体育館裏で彼女と過ごしていた。 『もう、なんで卒業式なのにちゃんとしてないのかなあ』 文句いいながら、彼女は丁寧に髪を櫛で梳かしている。 彼女は、いつもポケットに櫛やブラシを入れていた。 彼女のこういうところに"女性らしさ"というものを感じていた。 まあ、いまの時代に女性らしさとかいうのは死語すぎるが。 けれど、そうしたさりげない女性らしさというものを感じて愛おしくなるのは仕方がないのではないか。 行きすぎた女性らしさは、あまり好ましくはないが。 そんなしょうもないことを考えながら梳かし終えたらしく、つぎはワックスで毛先を整えだした。 『…今日で"最後"かぁ』 ボソッと小声で彼女がそうつぶやいた。 あっという間にセットされて彼女の出した鏡でみたら後ろが編み込みハーフアップになっているかとおもえば、なんと薔薇の形になっていて驚いた。 『今日は、“最後"だから』 そういって彼女は、いつもよりさみしそうに笑っていた。 たまらなくなって彼女を抱きしめた。 ずっと、このまま時が止まればいいのに。 キーンコーンカーンコーン。 残酷なチャイムが鳴る。 『…もう、行かなきゃ』 彼女が離れようとした矢先。 『ぷっ…、ちょっとみてみ』 彼女が鏡を出してきたからみてみたら。 髪の毛に桜の花びらがついていた。 『ヘアアクセついてかわいくなったなあ〜』 彼女は、そういいながら笑っていた。 俺が大好きだったあの笑顔で。 *
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