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『こちら満月(まんげつ)ホットダイヤルです』 「久しぶり」 『お久しぶりです』 ずっと持ち続けていた満月(まんげつ)ホットダイヤルのカードを片手に、俺はまた電話をかけた。 水色の色画用紙をカットして手書きで番号が書かれているそのカードは、今も俺のお守り代わりだ。 『ご立派になられましたね』 「先月の中継見た?」 『見ましたよ。でも、なにが「あるホットダイヤル」ですか?うちは満月(まんげつ)ホットダイヤルです』 「そんな架空の名前。全国放送で混乱を呼ぶだけだろ」 ずっと変わらない聞き慣れた声は相変わらず心地良い。俺は白いタキシード姿で目の前のチャペルを眺めつつ、懐かしい感触に頬が緩んでいた。 「夢はまだまだこれからだけどさ。いつでも全力で臨むから。それで、あのさ。俺、今から挙式なんだよ」 『幼馴染みの婚約者と、ですね』 「そうそう。思えばあの頃、ようやく引きこもりから脱出したのはいいけど中々授業おいつけなくて。あいつにはずっと……めちゃくちゃカッコ悪いとこばっか見せてたんだ」 特に英語がひどくて、あいつは土日も家に来てリーディングの特訓に付き合ってくれたっけ。
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