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「……ごめん。ムーンが悪いんじゃないのに」 『構いませんよ。でも、行きたい高校があるのでは?』 「そうだけど。でもよくわかんなくなった」 『あなたの夢の第一歩ではないのですか?』 俺は無意識に本棚の上に飾られているトロフィーや試合の時の写真に目をやる。小学1年の時に入会したのは、地域に愛される田舎の小さなサッカーチームだ。 これまでずっと、仲間と楽しくサッカーができればいいと思っていたのだが。ある日突然、サッカーの強豪校からスポーツ推薦の話がきた。最初は舞い上がったし嬉しかったし、よく考えもしないで俺はプロになるとか言って、両親や担任を喜ばせたのだが……。 「急に怖くなった」 『怖く?』 続きを話さないとと思ったのだが、戸惑う。自分で言っておいてなにがどう怖いのか、わからなかったからだ。 結局また、自分から通話終了のボタンを押してしまった。
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