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『あの、もしもし?』 「え?ムーン?」 『よかった出てくれた……。あ、お久しぶりです。こちら満月(まんげつ)ホットダイヤルです』 「わかるけど。こういうホットダイヤルって、そっちからかけてきちゃダメじゃないか?」 『細かいことはお気になさらず』 「いやだってほら、個人情報の問題とか色々……」 最後の方はつい笑いながらになってしまった。今さら俺たちの間に法律もなにもないだろう。 「この前はごめん。弱音吐いたうえに笑うとか。嫌な気分にさせたな?」 『いいえ。なんでもお聞きするのがホットダイヤルですから。それに本音をお話しくださって嬉しかったですよ』 「でも、あれから何度かけても繋がらなかったし」 相手から切られる会話がこうも辛いとはと初めて分かった俺は、あの後慌ててリダイヤルしたのだが全く繋がらなくなっていたのだ。 『それはですね……実は私のスマホが電池切れでして』 電池切れ? 『そのまま充電ができなくなってしまって……つまり故障ですね。それで機種を変更してもらって、やっと今日手元に届いたんですよ』 ホットダイヤルなんだからフリーダイヤルを用意しとけよとつっこみたくなる。まあ無理だろうけど。それにあのカードに書かれた電話番号からして固定でないことは明白だった。
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