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人が滅多に通ることのない体育館裏に連れて行かれて、今日もクラスで目立つ存在である三人グループに理由もなくただ殴られていた。
この時間は、彼らが飽きるまで続く――。
目立たないように、顔から下をひたすら殴ったり蹴ったりする時間が続いていた。
何度もえずきそうになるのを必死で堪え、彼らが飽きるのをひたすら待つ時間が恐ろしいくらいに長く感じた。
「おい、ほらっ、まだまだだぞ。立てっ、ほらっ、立てって」
ふらつき力の入らなくなった足を何とか支えつつ立ち上がった瞬間、両側を二人に押さえ込まれ、無抵抗の俺のお腹に思いっきりパンチが飛んできた。
「うっぐっ……」
口から血が吹き出したのは覚えているけれど、そのまま俺は意識を失っていた。
目が覚めたのは、保健室のベッドの上だった。
外はもうすっかり暗くなっていたけれど、目が覚めた時にすぐ隣にベッドへ腕を枕に眠っている川崎陸翔の姿があった。
一度も話したことのない彼が、どうしてここにいるんだろう?
そう思いながらも、あまりにも綺麗な寝顔に無意識に自分の腕を伸ばしてその頬に触れていた。
「んっ……」
「あっ、ごめん。起こしちゃった?」
「俺、寝てたんだ……」
「みたいだね」
「お前は、大丈夫なのか?」
「……平気……かな……」
本当は殴られたところがズキズキと痛んでいるけれど、何も関係のない彼のことを巻き込むわけにはいかない。そう思って、嘘の返答をする。
「そっか。なら、良かった」
そんな俺を安心させるかのように優しい表情でそっと大きな手が頭にぽんぽんと乗ってきた。
不思議と嫌だという感覚はなくて、ほっとするような温かさを感じた。
クラスは違うけれど、何となくろうかですれ違う時は視線を合わせて軽く目配せする。特にどちらかが声をかけるわけでもなく、肩が触れそうな距離まで近づいてすれ違うだけの短い時間が、とても安心できる瞬間だった。
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