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「紘ちゃん!私、文化祭ラブコメがしたい!」
私、紫門紘子の幼馴染であるところの辰美唯の無駄な努力病が始まった。
「唯、何言ってるの?」
その時の私は物凄い面倒そうな顔をしていた、断言しよう。
「この前紘ちゃんが見せてくれた小説、文化祭のラブコメ小説!あれを私もやってみたいの!」
この前、同じ小説部の友人に恋愛小説を紹介した。
単純で突っ走る友人にそれを紹介した私が悪いのだが…
「はぁ、原因私なのがねぇ
で、誰とラブコメを……聞くまでもなく五里松か。そりゃぁイチャイチャラブラブしたいよねぇ」
唯の顔が真っ赤になる。それが楽しくて口角が上がる。
「いいいいてゃいてゃなななんて、しししたいわけにゃいし!」
「へー五里松は否定しないのね」
「~~~ッ‼」
五里松千世、私と唯の幼馴染でアメフト部主将。そして唯が好きな奴だ。
「で、五里松と何したいの?」
「もー、千世ちゃんとじゃないってば
えっとね、文化祭を二人で回って見て、美味しいもの食べて、一緒に出し物見たり、一杯話したいの」
キラキラした目で夢を語っている。あー、本当に無駄な努力だらけだ。何が無駄って、全部無駄なんだから。
「えーっと唯ぃ、今日が文化祭当日だって知ってた?」
「…うん」
「で、唯、私達小説部は文化祭で小説誌を売る事になったよね?」
「…うん?」
首を傾げ始めた。
「とぼけるな
入稿ギリギリになった阿呆が謝って『お詫びに文化祭全日店番するから(裏声)』と言ったのを私は忘れてないからね」
「うぐぐぐ……」
今、私達は部室で店番をやってる。閑古鳥が鳴いてるけど、店番は一人必要。そもそも……だ。
「千世の奴も今日はアメフト部の方で腕相撲大会やるって言ってたでしょ?
去年アイツが無双して今年は防衛戦になるから、挑戦者尽きない限り奴も行けないよ?」
「グググ…うううううううう……」
無駄な努力を……はぁ。
「じゃ、私行くトコあるから」
「私を置いてかないで~」
「人聞き悪い、折角気を使うのに」
泣きそうな唯を放置して私は出て行った。
「じゃ、私はこれで」
部室前に居たゴリラに言葉を投げる。
「有難う」
「一応聞くけど……防衛線はどうなったの?」
「防衛線一戦目で机が壊れた
俺は殿堂入りって事で決着した」
「脳筋め…ま、いいや
じゃ、無駄な努力家を宜しく」
「?????」
私は無駄な努力家を放って青春を謳歌しに行った。
その後どうなったかは知らないけど、友人達はとても楽しそうだったとだけ私は言っておく。
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