暑い夏のなごり

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暑い夏のなごり

 今年はものすごく暑い夏だった  いつも暑すぎる夏の時には色づかず  秋になるとそのまま散っていく家の前のイロハモミジ  今年は暑すぎる時期が長かったのが良かったのか  急に冬を思わせるほどに気温が下がったのが良かったのか  思いもかけず真っ赤に色づいた  こんな風に色づくのは久し振り  自然の営みは ヒトには計り知れない  色づきたいと思った時には モミジは勝手に色づくのだろうか  散りたいと思った時には モミジは勝手に散っていくのだろうか  ヒトの思惑など関係なく 色づき 散り行く  久しぶりの全部真っ赤な イロハモミジ  もしかして夏の暑さで(じつ)は真っ赤になっていたのかもしれない  それでも秋が来るまでは 色づかずに頑張っていたのかもしれない  久しぶりの真っ赤なあなたを見て  モミジはこんな風に色づくんだったと思い出す  これから きっと一気に裸になるあなた  また来年は春の芽吹きから美しい姿を見せてください 【了】  
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