ト書きのない文学シリーズ10 珈琲

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店主「はい、お客様。お会計でよろしいでしょうか」 客「ああ、お願いします」 店主「いつもと同じく、ホットコーヒーのみ、ですので、350円ですね」 客「いつもコーヒーだけで長居して申し訳ないね。ハハハ」 店主「いいえ、毎日、開店から閉店まで、コーヒー一杯だけで、本当にありがとうございます」 客「あ、それからさ、椅子に座ったらチクっとしてね。見たら画鋲が置いてあったんだけど、あれって、嫌がらせ?」 店主「嫌がらせです」 客「あやっぱり。じゃあ、水のコップの中にね、髪の毛はいっとったんよ。あれもひょっとして」 店主「嫌がらせです」 客「この寒空に俺のとこの後ろの窓だけずっと開けてたのも」 店主「嫌がらせです」 客「そうか、いやぁすっきりした。毎日だもんで、ずっともやもやしとったんだ。やっぱり嫌がらせか」 店主「はい、そうでございます」 客「ハハハ。あんた面白い人だな」 店主「恐縮千万です」 客「まてよ。店に入った瞬間に、顔にクリームたっぷりのパイ投げられたのもあれひょっとして・・嫌」 店主「が、ら、せ!」 客「ウハハハッ!そりゃそうだよなぁ!ハハハ。愉快愉快、なるほどねぇ。えーと、350円ね。1万円札しかねぇけどこれで」 店主「毎日なんで慣れております。お客様、だけ、のために小銭を用意しましたので」 客「申し訳ないねぇ」 店主「それでは、9650円のお釣りでございます」 客「あれ、全部、10円で?ひょっとしてこれ」 店主「嫌がらせ、でーす!」 客「お、重いな、腕折れそうだわ。ハハハ!」 店主「折れればいいのに」 客「ワハハハ。あんた面白いな」 店主「恐れ入ります!」 客「じゃあ、また明日!」 店主「もう2度と来るなーっ!!」 客「ハハハ、笑える。おっと危ない、床に大量の油。殺す気か」 店主「正解!」 客「ウハハハ、じゃあまたなぁ!」 店主「子猫に噛まれて死んじまえーっ!!!」 客「ハーッハハハ」 店主「・・・なんで来るんだろ」            【了】
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