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「実は、この人形は」
野島が説明をする。
「三十代の女性が亡くなるまで、“しーちゃん”と名付けて大切にしていた手作りの人形です。一緒に火葬してやって欲しいと頼まれ、棺に入れたのですが……」
火葬が終わって炉を開けると、人形だけ燃え残っていたという。
「ほう」
住職が声を出す。
人形をよく見れば、着ているワンピースが少し焦げていた。
「燃えなかったとご遺族にお見せして、厳粛な葬儀を騒がせるわけにはいきませんから、お骨上げの前に葬儀社の方で引き取りました」
葬儀社で保管していたが、夜泣いていたとか動いたという噂が社員の間に広まり、寺に持参したという。
「どうだ? 清矢、何か感じるか」
住職が隣の少年に聞く。
「何か使命を持っているようですね」
しばらくじっと人形を見てから、清矢は答えた。
「死者の魂が入っているということはないか?」
住職はかつて、亡くなった人の肉体が燃え尽きる前に、その魂が一緒に棺に納められた人形に乗り移って、人形が燃え残ったのを見たことがあった。
「いえ、亡くなった方は成仏されています。おそらく使命を果たすために、人形だけこの世に残ったのでしょう」
清矢は答え、優しい眼差しを人形に向けた。
「けなげな人形ですね。しーちゃん」
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