39人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「しーちゃん、もう時間がないよ」
清矢は言った。
「どうしてここがわかったの?」
志帆子は尋ねた。
「今年、紬ちゃんの中学に赴任した友人から、人形に追われて二階から飛び降りた牧野梨華の話を聞いたんだ。相談されて調べていたら、しーちゃん、君に行きついた」
清矢はそれから、悲しそうな目で志帆子を見た。
「君は家族を守るために、やり過ぎてしまったんだよ。それに人の形を保つのも限界だろう。いつか家族に人形だとバレてしまうよ」
わかっていた。でも、もう一つやらなければならないことがあった。
「あと一日だけ、待ってもらえませんか? 明日の朝、お寺に帰ります」
志帆子が頼むと、青年は肯いて帰って行った。
夕方、志帆子は陸の帰りを待っていた。
またいじめられていないだろうか? 怪我をしていないだろうか? もし何かあったら、今夜……。
「ただいまーー!」
元気よく陸が帰ってきた。
「母さん、僕、健斗君と友達になった」
嬉しそうに陸は言う。
「えっ?」
「この前のお兄ちゃんが学校の前で待っていて、僕と健斗君に話し合いさせてくれたんだ。健斗君は最初は聞こうとしなかったけれど、お兄ちゃんが怖い話をしたら、握手できた」
最初のコメントを投稿しよう!