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電車に乗ってからスマートフォンを見ると、同時刻にチャットを受信していた。これか。
「え──」
息を呑むのが分かった。
《同窓会行く?》
霜馬からだった。前に連絡を取ったのは卒業する前だから、もう2年ほど前だ。
私は既読をつけるか迷った。向こうもすぐに返信が来るとは思っていないだろう。しばらく未読スルーしてもいいかもしれない。
それなのに、どうして私は躊躇っているのだろうか。
霜馬だから?
霜馬だから、私はいつもみたく動けないのだろうか。
あの時の感情が段々と鮮明になって、私の心に蘇る。思い出したくない感情が、霜馬の存在で思い出されていく。
もう二度と思い出さないと思っていたというのに。
もう二度と会わないと思っていたから。もう二度と連絡なんて来ないと思っていたから。
『俺さ、菜月のこと──』
次は──と私の最寄り駅が読み上げられる。私はスマートフォンをポケットに突っ込んで、まだ停車していたいのに立ち上がった。
走ったりしていないのに、心臓の音はやけに大きかった。耳元で五月蠅く鳴っている。頬も熱かった。多分、傍から見たら頬が紅く染まっているように見えるだろう。不審に思われているだろうか。
扉が開く。人がぞろぞろと降りていく。私もその波に乗って改札の外に出た。うっすらと輝く星々が私を出迎えてくれる。
静かな街だ。余計、心臓の音が聞こえる。
まだ電車の中の方が五月蠅かった。
「どこで間違えたんだろう」
頭の中であの日の記憶が蘇る。
真っすぐに私のことを見つめる霜馬。
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