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好きを認めるのは、簡単じゃない。
簡単に認められたらいいけど、どうしても心の中には認めたくないという確固たる信念があった。
きっと、相手との関係性を壊したくないのだ。変わってしまうのが怖いのだ。
臆病だから、私は。
「好き」を見て見ぬフリしている方が、多分辛い。認めてしまった方が楽だ。
だけどそれができないのが、私たち人間だ。
「人間だ」なんて、勝手に一般化している。個人の意見を大多数の意見にしないと不安なのかもしれない。臆病だから。
自分だけの意見は画期的ではなく、孤立なのだ。
だからサークルの同期に対する気持ちを認めることも、できなかった。
サークルの男友達はあくまで友達。恋愛対象じゃない。関係性を変えないためにも、こうして区切るのがベストなのだ。
「菜月、今日無理してるよな」
霜馬の優しい瞳が私を捉える。
霜馬はみんなと一緒にいる時はよくふざけてるのに、こうして二人っきりになった時に急に大人しくなる。顔もいいし、優しいからそんなギャップのある霜馬を好きな子はきっと沢山いるんだろうな。
「俺の前では無理してほしくないんやけど」
ほら、そういうところだよ。ズルいよ、二人の時に言ってくるのは。
霜馬の優しい目が私を心配そうに見つめていた。
「いつもと変わらなくない?」
私はつとめて何言ってんだコイツ、みたいな口調で言った。
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