from:まほ

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「……ただいまっと」  返事はない。無人の我が家に帰り着くなり、わたしは月野の部屋に駆け込んだ。  ピンク色に囲まれて、急き立てられるようにメイクをする。  鏡の中のわたしが、虫けらから人間になった。人権取得完了。 『その顔じゃメイクしても無駄』  鏡を眺めながら、月野に向けられたという暴言をふと思い出す。 「整形」の二文字が改めて脳裏に浮かび上がった。  なんとなく、不自然で悪いものという印象を持っていたけれど。  人間に対する評価が見ための良し悪しで決まってしまうというのなら、それは唯一無二の希望なのかもしれない。  すがるような気持ちで、整形にかかる費用を調べてみると…… 「たっか……」  わたしは目を剥いた。  でも、貯められない金額ではない。  月野と違ってわたしは、もともと熱心に勉学に励むタイプではないから、バイトを週四日くらい入れても、成績にさほど支障はないと思う。頑張れば、数か月で目標額を貯められるかもしれない。 「バイトかぁ……」  それから、求人情報を検索するのに夢中になってしまう。  気付いた時にはすでに一時間目が始まっている時間だった。  登校する気なんてすっかり失せていたから、あわてて学校に欠席の連絡を入れる。 「……はい、すみません。明日には行けると思うので」  後ろめたい気持ちで通話を切ったところへ、メッセージ受信の通知音が鳴った。  ディスプレイに表示される、見慣れない名前とシンプルなメッセージ。  刹那まほ『お金作れた?』 「……誰?」  聞き覚えのない名前だった。
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