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6.オメガの巣作り
七日目の夜。先に湯浴みを終えたリオルは、シグルドが湯浴みをしているあいだに、いそいそとシグルドの服を集める。
今日こそ完璧な巣を作ろうと思っていた。シグルドが喜んでくれるような、可愛くて立派な巣が作りたい。
ただし問題はひとつ。シグルドは湯浴みを終えたらすぐにこの部屋に戻ってきてしまう。だから限られた時間の中、精一杯作らなければならない。
それなのにリオルの身体はほてってきた。七日目とはいえヒート期間中だ。一日目ほどの辛さはないが、少し頭がぼうっとする。
「ダメダメっ、頑張らなきゃ」
シグルドの服をベッドの上に並べて山積みにする。リオルのこだわりは、巣の中に入ったときに気持ちよくなれるようにボタンなどの固い部分は予め服を折って布地で包んでおくことだ。
そうして作った服を並べて居心地のいい巣を作り上げていく。
「よしっ!」
短時間にしては、自分の納得のいく巣が作れた。なかなか上出来だ。
リオルは形を乱さないように、そっと巣の中に身を委ねてみる。
「はぁ~~最高だ……」
ふわふわで居心地のいい巣だ。すぅーっと深呼吸してみると、シグルドのいい匂いがする。最近はこの匂いを感じるたびに、シグルドのことを思い出して心がぽうっとあったかくなる。
前からシグルドのことは好きだったが、今日までの七日間、シグルドと濃密な時間を過ごしてきてさらにシグルドのことを好きになった。
ヒート期間ということをいいことに、リオルは寝ても覚めてもシグルドにくっついている。シグルドも喜んでそれを許してくれるから、食事のときまでベタベタくっつくことになってしまう。
「まったくシグルドったら、そんなに僕のことが好きなのかな」
リオルはシグルドのことを思い出して巣の中でひとりニヤニヤして頬が緩みっぱなしだ。
シグルドは「リオル、リオル」と常にリオルの姿を探しているし、一緒にいると「こっちにおいで」とすぐにリオルを抱き締めようとする。
リオルが何かを望むとすぐにそれを叶えようとするし、目が合うと嬉しそうに目を細めてリオルに微笑みかけてくる。
リオルにもシグルドにも、お互い離れる気はない。これは一緒にいるしかないみたいだ。
「幸せだ……」
リオルが幸せの溜め息をついて、シグルドの服に頬をすりすりしていたときだ。
部屋の扉が開く音がして、リオルがハッと身体を起こすとそこには最愛の人が立っていた。
その姿を見ただけで心が跳ねた。長身で男らしい体格のシグルドを見て、相変わらず惚れ惚れする。やっぱりシグルドは世界一の旦那さまだ。
「立派な巣だな。まさか、俺が喜ぶと思って作ってくれたのか?」
シグルドは巣を見て絵画のように整った美顔を綻ばせる。その顔がまた奇跡みたいにかっこいい。
シグルドの様子を見て、リオルも笑顔になり、うんうんと二度頷いた。
「リオルは俺がそんなに好きなのか。嬉しいな。こんな……こんな……」
感極まっているシグルドを見てリオルは声を出して笑う。巣を作っただけでこんなに喜んでくれるなんて、シグルドは以外と感動しやすいタイプなのかもしれない。
「シグルド」
リオルはオメガの巣の真ん中で、巣の山のてっぺんをポンポンと叩く。
シグルドはリオルの行動の意味を理解しあぐねているようだ。
でもリオルの身体はヒートの熱で欲情していて、顔まで熱くて、頬がほてっていることは自分でもわかるくらいだ。こんなときに番のシグルドにお願いしたいことはただひとつしかない。
「……ここで子作り、しよ?」
今夜はシグルドとふたりで巣の中に潜り込みたい。この中で大好きなアルファと愛を育むのがリオルの夢だった。その夢をシグルドは叶えてくれるだろうか。
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