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朝を迎えるころになって、リオルはシグルドの腕の中で眠りについた。
目が覚めると、そこにはシグルドの笑顔があって、食事を与えられ、「身体を綺麗にしよう」と白い大きな布でリオルをくるんだあと横抱きにされ、湯浴みに連れて行かれる。
シグルドに身体を丁寧に洗われ、湯の中でポカポカに温められながら「身体がツラいところはないか」と手足の筋肉を解される。
そうやって身体を整えられると、清潔になったベッドのシーツの上に戻される。背後では侍女たちの働きももちろんあるが、シグルドはリオルに対して至れり尽くせりだ。
「リオル、ヒートの熱はどうだ?」
ベッドの上、リオルのすぐそばに横になったシグルドは優しい手でリオルの額や首筋をなぞる。
「たくさんしてもらったから、今は大丈夫だよ」
ひとりで迎えるヒートと、アルファと一緒に迎えるヒートでは全然違う。
身体が熱くなるたびにシグルドに抱かれる。そこに苦しさはなく、ただ気持ちよくなるだけだ。
本能のままに乱れても、シグルドは「可愛い可愛い」とリオルを抱き締めてくれた。ああ、この人の前ではどんな痴態を晒しても構わないのだと気がついたら、思いのままに気持ちよくなれていた。
行為のやり過ぎで身体がだるくなっても身の回りの世話はシグルドが全部してくれるし、まるで自分はシグルドに愛されるためだけの存在になった気持ちだ。
「リオル。少し熱くなってきたんじゃないのか……?」
リオルの身体の熱を確認していたシグルドが不安げな顔になる。
「……うん。ねぇ、シグルド、少しだけ抱き締めて」
リオルはシグルドに身体を寄せる。きっと湯浴みのあと、少し身体がほてっただけかもしれないが、何か理由をつけてシグルドにくっついていたかった。
「もちろんだ。嬉しい。リオルに必要とされることが嬉しくてたまらない」
シグルドはリオルを抱き寄せ、背中を静かに撫でてくる。
ヒートの身体をシグルドに触れてもらえるととても気持ちがいい。こうしてシグルドが四六時中そばにいてくれると、いつ発情の波が襲ってきても助けてもらえると心が安定する。
なによりも、心置きなく朝から晩までシグルドを独り占めすることができる。
「リオルが俺の番か」
シグルドの優しい指先がリオルのうなじに触れる。そこにはできたばかりの咬痕があり、いまだに熱を帯びている。
「シグルドは僕のアルファだ」
リオルはシグルドを上目遣いで眺めてみる。シグルドはやっぱりかっこいい。シグルドの瞬きで揺れるまつ毛のひとつをとっても綺麗だと思う。
あの蒼翠色の瞳で見つめられながら、形のいい唇で愛を囁かれる。リオルがたまらなく好きなときだ。
「俺の夢が叶ってしまった。リオルを番にできて本当に嬉しい。番の契約はたった一度きり、一生涯消えることはないものだ。リオル、これからはずっと一緒に生きていこう。俺から離れることは絶対に許さないからな」
シグルドは愛おしそうな目でリオルを見て言うが、番契約はオメガにとっては一生に一度のものだが、アルファはオメガを犠牲にすれば何度でも番解除でき、新しく番うことができる。
シグルドもそのことは知っているはずなのに、番契約のことを「一度きり」だと言ってくれたことを嬉しく思った。どうやらシグルドには、番解除をする気など毛頭ないらしい。
「うん。ありがとう、シグルド……」
アルファに番解除されたらリオルは生き地獄を味わうことになる。そんなオメガの不安を吹き飛ばすかのように、シグルドは「絶対に離さない」とリオルの身体を強く、強く抱き締めた。
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