彩都とアヤメ

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『…彩都?どうしたの?』 母の声で、ハッと意識が浮上する。 どうやら考え込んでいたみたいだ。 「…いや、なんでもないよ」 『そう?ならいいんだけど…』 「…ところで、もう今回の問題は終わり?」 そう聞くと、母さんが『そうね、また次の問題を出すまで待っていてちょうだいね』と言う。 「そっか。じゃあまたn「待った」」 俺の言葉を遮るように聞こえた凛々しい声。優にぃの方を見ると、手を差し出していた。 どうやら、スマホを貸してほしいみたいだ。 素直に渡すと、優にぃが母さんに「優だよ、母さん」と告げた。 何を言うのかと思っていると、優にぃは真剣な顔で、言葉を発した。 「もうこんな勝負、やめにしよう」 「『……え?』」 スマホから母さんの素っ頓狂な声が聞こえる。どうやら、聞き間違えではないみたいだ。 「す、優にぃ…?何言ってるの?」 俺が聞くと、優にぃは安心させるように微笑んだ。 「彩都には、高校に行ってもらう」 …何言ってるの?優にぃは、味方だったんじゃ…!? 「俺、高校行きたくないよ…!」 優にぃに訴えかけるように言うと、優にぃは俺の頭を撫でてから、「ただし」と付け加えた。 「俺の通ってる高校に、生徒とは違う形で…だけどね」 そう言って俺に微笑みかける優にぃ。 情報過多で俺の頭はオーバーヒートしちゃいそう。 俺は知らなかった。唖然としている間に、優にぃと母さんが、 『ちょっと!そしたら私と彩都とのコミュニケーションが…!』 「……彩都の写真を一週間に一枚。これでどう?」 『…二枚』 「分かった。二枚にしよう。そしたらいいんだね?」 『…くっ、仕方ないわね…。その代わり、しっかり約束は果たしなさいよ!』 「ありがとう、母さん」 などと約束を結んでいたことは。 「…と。あやと…彩都!」 「ぅにゃっ!?」 …なんか変な声が出た気がする。思わず赤面すると、優にぃが心臓を抑えていた。 「す、優にぃっ?」 「だ、大丈夫だよ、彩都…。ちょっと可愛すぎて死にかけてただけだから」 優にぃのブラコンは健在のようです。 てか、本当に優にぃはおかしいよ。俺が可愛いとか、絶対ありえないし。 ブラコンフィルター越しだとしても、俺はせいぜい中の下あたりだろうに。 まったく、優にぃは困ったものだなぁ。 あ、でも、優にぃは弟の俺からしても、本当に格好いいんだ! さらりとしてるけど男らしい紺色の髪は、深海のように綺麗だ。 黒色の瞳は、綺麗なまつ毛に縁取られて、余計にイケメン度を増し増しにしている。 「…俺も優にぃみたいにイケメンになりたい」 ボソリと呟くと、苦笑された。そんな姿も様になるんだから、ほんとイケメンってずるい。 「(彩都は無自覚だもんな…)まあまあ、彩都はそれぐらいがいいよ」 「身長は平均ギリギリ超えてるよ!」 「(…そうじゃないんだよなぁ)あはは…」
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