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しばらくして。
優にぃに淹れてもらったコーヒーを持ってソファに二人で座る。優にぃは要らないみたい。あ、ちなみにブラックね。俺は甘いのは苦手なのだ!優にぃは逆に甘党らしい。
優にぃの淹れたコーヒーはとっても美味しいんだよ。
よく皆に意外って言われるけど…なんでだろ?
そう思いながら、コーヒーに口をつける。
「どう?美味しい?」
「うん!」
「良かった」
そう言って優にぃは俺の腹に手を回し、肩に顎を乗せる。
今の体制は、優にぃの股に俺が座ってる。
これは優にぃのお気に入りの体勢らしい。ソファはとても大きいのに、何故か優にぃは俺を股の間に座らせるのだ。
まあ、暖かいし、いいんだけど。
優にぃは、机の上に置いてあるお菓子入れの籠から小包のチョコを取り出して、俺の口にちょんちょんとつけてくる。
「優にぃ、どうしたの?俺、チョコは食べれないよ。甘いし」
「いいから。食べてみて。きっと気に入るはずだ」
今まで優にぃがおすすめする物にハズレはなかった。だから信じて口を開ける。
コロンと口の中に入ってきたチョコを噛んでみると、ビターな味が口に広がった。
「…どう?」
コクコクと勢いよく頷く。
チョコは甘いものが多かったから、もう食べることはないと思っていた。
久しぶりのカカオの風味に、目を輝かせる。
優にぃがふわりと微笑んでもう一つ、またもう一つと、どんどん口に入れてくれる。
ふとコーヒーを口に含むと、チョコとコーヒーの味が混ざり合って、とても美味しい。
「優にぃっ!チョコとコーヒーって合うね!美味しい!」
振り返って優にぃを見上げながら笑いかけると、優にぃは蕩けそうな笑みを浮かべた。
その笑顔がとても甘く感じて、赤くなった顔を隠すように前を向き、コーヒーを飲む。
ブラックコーヒーを飲んでるはずなのに、何故か甘く感じたのは、気のせいだろうか。
「彩都」
不意に呼ばれた自分の名前に、ぴくりと肩が跳ねたが、何事も無かったかのように後ろを向き、「どうしたの?」と尋ねる。
「俺もそのチョコ食べてみたい」
「え、でもこのチョコ、ビター味だよ」
優にぃは甘党のはずだ。ビター味のチョコなんて、もっての外なのに。
「…大丈夫」
そう言ってチョコを口に放り入れる優にぃ。
心配になってハラハラと見つめていたら、目の前に優にぃの顔があって、びっくりして目を瞑る。
その瞬間、唇に触れる暖かな感触。
…キス、されている。
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